2024年8月6日火曜日

東日本選抜トーナメントの振り返り(中根)

 

こんにちは(挨拶)

都立大将棋部部長の中根です。今回は先日行われました東日本選抜トーナメントの振り返りを書かせていただきます。

 

 東日本選抜トーナメントは春季団体戦における各リーグの昇級校(C2級からは1校)と、A級残留校(1位、2位を除く)がトーナメントを行い、上位2校が東日本大会への出場権を得る。また、A級残留校はシードになる。本校は春季団体戦においてA級へ昇級したため、本トーナメントへの出場権を獲得した。

 この東日本選抜トーナメントの大きな特徴に5人制で行う、というものがある。都立大は他大学に比べてあまりに少数精鋭のため、7人制と比較してより力が発揮出来ると踏んでいた。

本来はA級校がシードで二回戦からの登場になる予定だったが、横浜国立大学、高崎経済大学、群馬大学の三大学が辞退となり、合計八校になったため位置が確定しているA級校以外で抽選を行うことになった

シード校以外の組み合わせは抽選で決めることになる。シードの都合上、左の山に入ると本命の慶應義塾大学との衝突は避けられず、右の山には昨季A級残留校の東京工業大学、一橋大学との連戦はほぼ確定という状況であった(下図参照)。ただ、慶應義塾大学が頭1つ抜けて強いため、右の山を引きたいと思っていた。

2024年度東日本選抜トーナメント表


しかし、そんなことを言っていたからなのか、無事左の山を引き当ててしまう。逆に言えば、慶應義塾大学に勝ちさえすればいい、とも言えるため、厳しい戦いにはなるが何とか勝ち抜きたいと思った。

 今大会だが春季団体戦の反省を生かし、味噌を全員分用意した。この味噌については2024年度春季団体戦の振り返り(中根)での「五回戦・筑波大学戦」で触れているため、わからない方はそちらに目を通していただきたい。東京農業大学の方から味噌について聞かれたが、何かと聞かれても我々もよくわかっていないので説明が難しい。しいて言えばお守り兼飲み物だろうか。

 

一回戦・東京農業大学戦

 

東京農業大学は昨季B1級に昇級した大学であり、侮れない相手だと感じていた。昨年度のB2級団体戦では四勝三敗と接戦だった。実は大会前日に交流戦で東京農業大学の方と会った際に「都立と慶応には当たりたくない」と話していた。見事どちらも引き当てていて、言霊は存在するのかもしれないと思った。

初戦は森谷氏との対局となった。昨年度のB2級団体戦の都立大との対局にも相手の方は出場していて、当部の部員が敗北していた。仇討ちのような気持ちで臨んだ。

なお相変わらず袖飛車のみを採用しておりますのであしからず。

第一回戦_東京農業大学


戦型は対三間飛車となった。三間飛車の4二金型は鈴木大介九段がYouTubeで紹介していたからなのか、最近になって相手にする機会が非常に増えた。最も慣れている戦型でもあるため、特に苦手意識は無い。



相手は△3三金から△2四金と、金で抑え込みにかかってきた。この形は抑え込む能力は高いが、何かと相手の金が遊びやすい形のため、まずまずだと思っていた。こちらの陣形は地下鉄飛車にするなどの発展性があり、ゆっくりした展開になればこちらが良くなる。そこで相手は▲4五歩と仕掛けてきた。以下は▲2二角成△同飛▲4五銀と進んだ。(下図)



これに対して△3五金には▲3七飛で大丈夫だと判断した。その後、相手は銀を取ることができない。実戦は以下△同銀▲3一飛成△4四角▲4三角と進んで勝ち切った。最後まで相手の2四の金が負担になってしまったのが苦しかったか。

以下は全体の結果である。

中根○―●森谷

森田○―●樋口

松村○―●櫻木

鎌田●―○當銘

高橋○―●川村

4-1で勝利となり、いい流れで二回戦に進むことができた。

 

ちなみに一回戦の結果だが優勝筆頭候補だと予想していた慶應義塾大学に対して中央大学が2-3と接戦を繰り広げていた。慶応義塾大学は主力の嶋村氏を欠いていたが、それでも頭一つ抜けて強いと認識していた。中央大学が接戦を繰り広げていたのに影響を受けて、自分たちも頑張らなくてはいけないと感じた。

 

二回戦・慶応義塾大学戦

 この対戦で勝ったほうが東日本大会への出場権を獲得する大一番である。

この対局が始まる直前、私が袖飛車党と知っているからなのか、袖飛車の対策を伝授されているような様子が目に入った。どんな対策が飛んでくるのか楽しみにしていた。

 二回戦は荒木氏との対局となった。荒木氏は元奨励会員であり、手ごわい相手だと思っていた。荒木氏は一年生なのだが、それ以外にも慶応義塾大学は一年生が多すぎる。我が都立大は主力の高齢化が顕著なのでうらやましい。



※便宜上先後反転

この△6四銀が相手の工夫。よくあるのは△4四銀と上がって銀対抗に組む手だ。それと比較して、3筋が弱くなる代わりに、こちらから▲7六歩と突きづらいという意味がある。この形は大昔に軽く検討したことがあったが、対面で指されるのはこれが初めてだったため、細心の注意を払いながら戦いを起こした。以下▲3五歩△5五歩と進み下図。



ここでの手が難しかった。▲3四歩、▲7六歩など有効そうな手がさまざまある。ここで私は▲3六飛とした。この手は△5六歩と取られて拠点を作られることを嫌った意味がある。次に▲2六飛があるため△5二飛の一手だが、そこで▲7六歩とすれば、単に△5六歩とする手には角交換してから▲3四歩がある。しかし、実戦では▲7六歩に対して先に△3五歩▲同銀を入れてから△5六歩と取り込まれ、3五にいる銀が遊ぶ形になってしまい、作戦負けになった。

ここでは▲3四歩と取って、▲3六飛~▲3七桂の形を目指すべきだった。5筋に拠点は作られるものの、こちらの駒の働きが良いため互角の勝負だっただろう。

このあたりではっきり作戦負けと認識したため、手元に置いてあった味噌を手に取って味噌を直飲みしようとした。チューブタイプのどう考えても飲むことが想定されていない形状のため、なかなか出てこず苦しみながら口にした。しょっぱかった。知ってた。

少し進んで下図。



飛車と角の交換になった局面。ここも非常に手が広く難しい局面だった。実戦は▲4五角と打って5四の歩を守りつつ、相手からの△2八飛を受けた。以下△3二金▲7七角と進んだが、そこでの△3三桂(下図)が当然だが想定していたよりも厳しかった。




これには▲3六角と引けば大丈夫だと思っていたが、次の△5六飛を軽視していた。

▲3七歩と受けるようでは△7六飛と回られて完封ペースだ。この後は無理やり銀損で手を作りに行ったが、冷静に対処されて負け。

戻って▲4五角と打った局面では、▲1六角(下図)と打つ手が最善だったようだ。全く見えていない手だった。



△3二金と受けると▲3四銀と遊んでいた銀が活用できる。まぁそれでも互角なのだが…。そもそもこの角を打てなければいけないような局面にしてしまったのが良くなかった。

この対局は序盤で時間を使いすぎてしまい、中盤の勝負所で時間の余裕がなくなってしまった。経験の少ない場面の時間の使い方については再考しなければならない。

全体の結果は以下のとおりである。

中根●―○荒木

阿部●―○山口

森田○―●堀内

松村○―●石野

高橋●―○鈴木

二勝三敗で敗北となった。あと一勝といえば惜しいように感じるが、その一勝は簡単に覆せるようなものではないと分かっている。大学全体としての実力向上が不可欠だろう。

 

今回の団体戦では敗北してしまいましたが、筆者である中根と、松村、森田の三名は東日本大会に関東選抜として出場する予定です。団体の悔しさを晴らせるよう精進いたします、応援のほどよろしくお願いいたします!

乱文ではありましたが、ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。

宣伝になりますが、11月上旬に行われます本大学の大学祭において、当部は部誌の販売と対局を行う予定です。私以外の部員の書いた自戦記や、私がブログに投稿した振り返りに肉付けをし、より赤裸々に書き直した完全版等を掲載する予定ですので、興味のある方は手に取っていただけると幸いです。

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